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突然ですがあなたは今、スマホですか?
(カビが生える場所の正解は一番最後まで読んでいただけるとわかります)
この本の副題は「ヒトの味方か天敵か」です。
カマンベールチーズは白カビが生えているし、ブルーチーズは青カビですよね?
お醤油だってお味噌だって「コウジカビ」というカビが作っているんですよ!
夏になるとエアコンがカビ臭くてげんなりしたり、お風呂のカビ退治は大変です。
こんなに私たちの身近にカビって存在しているものなんですね!
アンパンマンのカビるんるんは、ばいきんまんの手下で悪い役ですが...
実際のところはどうなんでしょう?
この本を読むと、カビのイメージが一変します。
もくじ
「カビはすごい!」ってどんな本?
カビはすごい!〜ヒトの味方か天敵か!?〜
浜田信夫 著 朝日文庫 (302ページ)
浜田信夫さんってどんな人?
1952年生まれ。農学博士。
京都大学農学部博士課程を経て、大阪市立環境化学研究所に勤務。
(現在は大阪市立自然史博物館の外来研究員)
長年にわたり、食品などに生えた”カビ”について、市民からの相談を受ける。
住環境のカビの生態について研究。
どんなことが書いてあるの?
300ページほど全てがカビに関する話です。
ちなみに目次はこんな感じです。
- カビの正体ー悪玉、善玉、日和見
- 食品にカビが生えた!
- 我が家の同居人はどんな存在?
- カビの恐怖、カビの恩恵
- カビとの付き合い方
この本には、私たちの生活に馴染みのある「カビ」の話がたくさん紹介されます。
- 洗濯機、お風呂、エアコンに生えるカビの話
- 食べ物に生えるカビの話
- 食べ物を作るのに欠かせないカビの話
- 薬を作るカビの話
「カビはすごい!」を読むと、
暗くて、ジメジメしているところにいる忌まわしき”カビ”が、懸命に生きていて健気で意外と可愛い存在じゃないか?
と思えてきます。
3つのトピックを中心に、カビの世界をご紹介します。
家の中で一番カビが多い場所はどこ?
全自動洗濯機はカビの宝庫!
家の中でカビが生える所といえば、お風呂、エアコンなどがパッと思い浮かびますよね。
でも実は...
家で毎日使う、全自動洗濯機にカビがもっとも多いんだそうです。
住宅全体を見回しても、そんなに大量のカビが生えているところを、専門家の私もめったにみることがない
「カビはすごい!」 浜田信夫
というくらい、洗濯槽はカビの宝庫なんですって。
浜田さんが洗濯槽に生えるカビを研究したところ、驚くべき事実が明らかになりました。
まず洗濯槽に生えているカビは、自然界では滅多にみられないカビだということ。
普通の家にある全自動洗濯機は洗濯槽がステンレスだし、カビが生えにくい加工がされているはずです。
ではなぜ、洗濯槽に生えるカビはどこからきてどうして生えるのでしょうか?
浜田さんの仮説はこうです。
- 新しい洗濯機にもカビが生えている
(洗濯機に生えているカビはみんな似ている) - 洗濯機から洗濯機へ移住しているのではないか?
- 普段着ている衣服などを介したカビの伝染ではないか?
衣服以外にも、水からの伝染(特にお風呂の残り湯)も検討したそうです。
水道の水は塩素消毒されていてカビは検出されず。
お風呂の残り湯でカビが検出されるには3日以上かかるので、伝染源ではないということ。
では、衣服から伝染したカビたちはどのように洗濯槽で繁殖するのでしょう?
専門家も驚き石鹸を食べるカビ
浜田さんはある仮説を立てます。
それは、
洗濯槽に生えるカビはどうやら石鹸カスを食べている
というもの。
界面活性剤の量とカビの生える数の関係を調べたところ、エキソフィアラ、スコレコバシディウム(どちらもカビの名前)は界面活性剤の量が増えるとカビの数が増えるということがわかったのです。
なんと、洗剤を栄養源に増えるカビがいるということが明らかになりました。
この結果は、専門家たちの常識を覆すものでした。
- 自然界は少数派のカビたちが、ヒトの身近にいる
- ヒトの近くにいるために、石鹸まで食べるという適応能力の高さ
カビを防ぐためにどうしたらいいの?
洗濯槽に生えるカビは、アレルギーの原因にもなり繁殖を抑えるのが大事です。
カビはイメージ通り、湿っているジメジメしている場所を好みます。
カビの繁殖を抑えるためには、まず洗濯槽を乾燥した状態に保つのが第一です。
実際に、全く乾燥機を使用しなかったものと乾燥機を週1で使用していたものではカビの生え方が全く違うという結果が出ています。
浜田さんの推奨は、週2〜3回1時間くらいかけてしっかり洗濯槽を乾燥させるようにする。
全くしない場合に比べて、約3倍カビの増殖を抑えることができます。
全くしないのと、週1で回すのはあまり違いはないそうです。
洗濯後にフタを開けておくだけでも違うみたいです。
ドラム式の場合は、フタを開けておくと子どもが中に入ってしまう事故があるのでなかなか開けられないのではないでしょうか。
そんな場合には「洗濯槽クリーナー」を使用しましょう。
完全に殺菌することはできませんが、カビにダメージを与えることはできます。
- 週2〜3回乾燥機をかける
- 洗濯槽クリーナーで定期的にカビにダメージを与える
食品に生えるカビ
カビは食中毒の原因ではない!
カビが生えたパン、カビが生えたお餅など、カビが生えていると真っ先に捨てますよね。
私は長年カビの検査を仕事にしてきたが、カビによる食中毒事件に一度もお目にかかったことがない。
「カビはすごい!」浜田信夫
食中毒の原因はカビではなく、細菌です。
カビも細菌も同じ”微生物”の仲間です。
カビは専門家の間では「真菌類」と言われている菌類の一種です。
「真菌類」には他にもきのこや、酵母(パンの発酵などでおなじみ)があります。
「真菌」と「細菌」は、細胞の中の構造が全く違うのですが...
ここではこの話は割愛します。
とにかく食中毒で気をつけるべきは、細菌です!
細菌は生鮮食品(肉・魚)などの水分が多く含まれる食品に生えます。特に夏は要注意です。
自己責任で!!
かつお節を発明した人は天才!
和食で欠かせないのは出汁!
特に昆布とかつお節を使った、一番だしは日本人の心ですよね。
考えたひとって、天才なんじゃ...
鰹節の歴史をひも解いてみましょう。
カツオは平安時代から干しておかずとして食べられてきました。
室町時代に、かつお節が発明されました。
かつおを3枚に卸して煮立ててから、燻します。
断続的に12回ほどゆっくり乾燥させる作業を繰り返して、天日干し。
これを薄く削ったものが花かつおです。
江戸時代になると「カビ付け」という工程が加えられます。
当時土佐や薩摩で作れたかつお節を大阪や江戸まで運搬する時に、運搬中に雑菌などによるカビ被害が発生していました。
そこで「カビにはカビを」ということで、あらかじめカビを生やした物を作りました。
すると厄介な他のカビの侵入を防げることがわかったのです。
(現在のかつお節パックに使用されているかつお節にはカビは生えていません)
- 乾燥させて長距離運搬できるようにするため
天日干しよりもカビを生やしたほうが水分含有量が10%低くなる - 他の厄介なカビが生えて来ないようにするため
- より美味しくするため
タンパク質が分解されて、うまみの素であるイノシン酸がつくられる
カビをつけることによって、より美味しくなったなんて棚からぼた餅ですね。
- 食中毒を起こすわけではない
生えられるところで懸命に生きている - かつお節、チーズ、味噌、醤油など私たちの生活に欠かせない美味しいものを作ってくれる
カビは薬も作れる!
カビが作るお薬で最も有名なのは世界で最初の抗生物質である「ペニシリン」ではないでしょうか?
「ペニシリン」の発見について少しご紹介します。
実験の失敗から発見されたペニシリン
イギリスの細菌学者であるアレクサンダー・フレミング博士の研究室は雑然としていてあまりキレイではありませんでした。
ある時黄色ブドウ球菌をシャーレに生やしていました。
が、そのシャーレに青カビが!!(明らかな実験失敗)
フレミング博士のすごいのは、このカビの生えたシャーレを大事にとっておいてしっかり観察し、青カビをもう一度育てたところ。
観察してみると、黄色ブドウ球菌が青カビによってダメージを受けていたのです。
同じ現象が見られるか確認し、詳細な実験を行って1929年に学術雑誌に発表しました。
その青カビが出している物質を「ペニシリン」と名付けたのです。
ペニシリンが感染症の治療薬として見出されたのは、フレミングが論文を発表してから10年後のことでした。
フレミングは1945年にノーベル賞を受賞しています。
実は同じ現象を見ていた日本人がいたのです。
東京大学の古在由直(こざいよしなお)も、カビが生えている近くに細菌が生えないという現象を見ています。
しかし古在は、カビの繁殖によって細菌の増殖が抑えられているのではと考えました。
同じ現象を見ていたのに、見解の違いで研究の将来に大きな影響を与えるんですね。
カビなしではヒトは生きていけない
カビってジメーってしていて、くらーいところにいる陰湿なイメージでした。
この本を読んでいたら、意外と可愛いじゃないかと思えてきました。
漫画「もやしもん」の、キャラクターたちがその辺にいると思うと愛らしいですよね。
私たちの身近なカビの話、対処の仕方など日常生活において知っていたほうが良い情報が満載の一冊です。
でもこの本は相当カビのことに興味がないと、読むのは難しいかもしれません。
なのでカビのことに少しでも興味を持ったというのなら、漫画「もやしもん」をオススメします。
冒頭の、スマホのどこにカビが生えるかですが...
カビは湿気っているところが大好き!正解はスマホとスマホカバーの間です。
定期的にスマホカバーを取り外して、乾燥してあげましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。