言葉の発信力を上げる!〜バズる文章教室〜
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「バズる」文章ってどんな文章でしょう?

「バズる」とは、一般的に「(主にネットを中心に)爆発的に広まること」、「たくさんの人に認知されること」という意味で使われます。

たくさんの人が読んで「いいね!」って思う文章のことだと思います。

でも、自分でも書けるの?

そんな疑問に答えてくれそうだったので、「バズる文章教室」を手にとって読んでみました。

「タイトル買い」です。

文章術だけではなく、文章の楽しみ方も教えてくれる本でした。

内容と共にご紹介します。

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「バズる文章教室」ってどんな本?

バズる文章教室

書評ライター 三宅香帆著 サンクチュアリ出版 (299ページ)

書評ライター 三宅香帆さんってどんな人?

1994年生まれ。高知県出身。

京都大学大学院人間・環境学研究家前期課程終了。

天狼院書店(京都天狼院)元店長。

2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた」がハイパーバズを起こす。

2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。

どんなことが書いてあるの?

本の見た目はとってもキャッチー。

部屋着姿の女の子がパソコンを目の前に寝そべっていますね。

この本を読んでいたら、夫に「いかがわしい本を読んでるのかと思った」と言われました...

公共の場で読む場合は、カバーをして読むのがオススメです。

この本は、文芸オタクによる文芸オタクのための本と言っても過言ではありません。

様々な作家、著名人、一般の人が書いたよく読まれている文章を例にとって、よく読まれている理由を解説していくという内容です。

目的は、

  1. (文章の終わりまで読もうかな)と思ってもらう。
  2. (この人いいな)と思ってもらう。
  3. (広めたいな)と思ってもらう。

こんな文章の書き方を教えてくれる一冊です。

その解説が超マニアック!

句読点の使い方、文章のリズム、言葉選びの仕方など...

今までこんな文章の読み方をしたことがない!という体験がたくさんできます。

今回は私が印象深かった3つのトピックに関してご紹介します。

この後の内容紹介では、引用文は割愛しています。

引用されている元の出典は書いておくので参考にしていただければと思います。

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1. バズるつかみ 恩田陸の快速力

恩田陸さんについて

私が個人的に大好きな作家さんの一人です。

日本を代表する女性作家。

「夜のピクニック」で第2回本屋大賞を受賞。

2016年に単行本として発売された「蜜蜂と遠雷」では、2017年の文学賞をほぼ総なめにしました。

「蜜蜂と遠雷」は2019年10月に実写映画化されるので、そちらも楽しみですね。

単行本はこちら
文庫版はこちら

快速力とは?

恩田陸さんの文章はすらすら読めます。

特に「蜜蜂と遠雷」のコンクールのピアノのシーンは圧巻。

では、なぜこんなにもスピード感があって読みやすいのでしょうか?

三宅さん曰く、恩田陸さんは一つの「接続詞」を効果的に目立たせるという手法をとっているそうです。

文章の中で「接続詞」はなかなか悩ましい存在で、感覚的に使うわけにいかない難物。

接続詞とは、「だから」、「しかし」、「また」、「そして」、「なぜなら」などのことです。

伝わりやすい文章を書くためには、一文一文にきちんと接続詞を書くのが普通。

例えば、

今日の朝の天気は雨でした。
しかし、お昼過ぎから晴れました。
だから、買い物にでかけました。
そして、醤油を買いました。
なぜなら、醤油が無くなっていたからです。
たとえば、醤油がないと今晩肉じゃがが作れません。
また、きんぴらごぼうも作れません。
ようするに、醤油がないと困ってしまいます。
といった感じで接続詞があるとすらすら読める一方、多くなるほど”鈍くさく”なってしまいます
接続詞を究極的に削って、一つを輝かせることができるのが恩田陸。
接続詞を削ることで、文章にスピード感が出ます。
一番伝えたいポイントの前に「接続詞」を置くことで、効果的に伝えたいことを読者に届けることができるそうなのです。
例えば、
昨日の夜は肉じゃがを食べた。
きんぴらも食べた。
味噌汁も飲んだ。
サラダも食べた。
しかし、ごはんは食べなかった。
「なんで、味が濃いのばっかりでご飯たべなかったの?」「どうした?」と読者をひきつける効果があるそうです。
どうでしょう?
指摘がなんともマニアック!
でも、使えそうなテクニックですよね。
特に、逆接の「しかし」「でも」「だが」は省略してしまうと意味が通じなくなってしまいます
伝えたいポイントの前だけ効果的に「接続詞」を使うようにしましょう。
快速力の正体は、接続詞をできる限り削ってスピード感を出しつつ効果的に接続詞を使うことでブレーキをかけるという手法のことでした。

この本の中で引用されているのは、恩田陸の『小説以外』。

内容も名文なので早速購入してしまいました。

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2. バズる組み立て 山極寿一の置換力

山極寿一さんってどんな人?

2019年現在、京都大学の総長をされている方です。

ゴリラ研究の第一人者。

ゴリラに関する著書をたくさん出版されています。

私が初めて山極寿一さんを知ったのは「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」(文春新書)でした。

ゴリラの研究のことなのですが、ヒトとどう違うか、どう同じかをすごくわかりやすく話していらっしゃいました。

それから2014年にヒットした「サル化する社会」に出会って、あっという間に読んでしまいました。

どちらもオススメの本なのでぜひ読んでいただきたいです。

では山極先生はどのようなテクニックを使っているのでしょうか?

三宅さんに解説してもらいましょう。

置換力とは?

山極先生は、ゴリラの研究の第一人者で大抵ゴリラの話をしています。

ゴリラと一緒に生活したり、ゴリラと一晩一緒に寝たり、ゴリラのハミングを聞いたり...

普通の人は経験できない特殊な経験を語ってくれます。

それを私たち一般にググッと近づけるために、文章を3つのステップで構成します。

  1. 「普通の人はなかなか経験できないこと」を語る。
  2. 「それは一体どういうものか?」を加える。
  3. 「私たちにとってはどういうものか?」を追加します。

この3つのステップを踏むことで、読み手側にとって遠い経験が身近なものに感じるようになるそうです。

ポイントは、”一般的な人の経験”と重なる部分を紹介すること。

三宅さんの例を引用すると、

  1. 旅先でこんな変わった食材を食べました
  2. 現地の人にとってはどんな食べ物なのか?
  3. 私たちにとってはどんな食材なのか?

 

私は◯◯という変わった食材を口にしました。その食材は現地の一般家庭で、毎日のように使われるものです。油であげたり、豚肉と一緒に煮込んだり、細かく刻んでお米と一緒に炊いたりするそうです。ちょうど私たちが口にする豆腐のような存在だと言えます。

これは読者がイメージしやすくなるだけではなく、「どこもみんな一緒」という親しみと興味を抱きやすくなるテクニックです。

自分にしかない経験談を語るときに、大いに参考になりそうです。

引用文は「ハミングで楽しい気分満喫」(ベスト・エッセイ2018より)

3. バズる言葉選び J.K.ローリングの超訳力

J.K.ローリングってどんな人?

言わずと知れた、「ハリーポッター」シリーズの原作者で、世界を代表するファンタジー作家の一人。

ほぼ、説明する必要がないくらい有名な作家さんですね。

今回、三宅さんが引用した文章はJ.K.ローリングさんのハーバード大学の卒業式スピーチです。

全文はググってみてください。

超訳力とは?

J.K.ローリングはスピーチの中で、古代ギリシャの歴史家プルタコスの名言「自分の内側で達成したことは、外側の現実を変えるだろう」を引用しています。

ただ名言を引用しただけではなんのことかさっぱりわかりません

ハーバードの大学生向けにこの名言を”超訳”していきます。

ハーバード大学の卒業生と言えば、世界トップレベルのエリート。

彼らは無数の人の人生を変える力がある。というのを前提に超訳します。

自分の内面で達成したことは、外側の現実を変えるだろう。

自分が変われば、他人も変わる。周囲も変わる。

(影響力の強い)あなたたちが変わると、周囲はものすごく変わる。世界も変わる。

自分をどう変えていくか?

読み手の境遇に当てはまるように”超訳”することで、自分が伝えたいことを偉人の影響力でもって伝えることができるのです。

ポイントは、引用したい名文を自分なりに噛み砕くこと。

ビジネス書などを読んでいると、偉人の名言がたくさん登場します。

いいな!と思ってメモしておくのですが...いざ引用しようとするとどうしたら良いかわかりませんでした。

偉人の名言をどう引用していくか、すごく参考になるテクニックでした。

紹介したテクニックのまとめ

  • 「接続詞」は強調したい・伝えたいことの前だけに置く
  • 自分の経験談を語るときは3つのステップを踏んで経験を一般化する
  • 引用したい名言は自分で噛み砕いて発信する

文章の新しい楽しみ方の教室

この本の中にはブログ、エッセイ、小説、スピーチ、歌詞の様々な文章が登場します。

それぞれについて、三宅さんのマニアックでわかりやすい解説がついていいます。

今書いているブログの文章も、私らしく書けば良いのだとそっと背中を押してくれる本でした。

私はこの本を読んで、書き方だけではなく、文章の新しい読み方・楽しみ方を教えられました。

これからもっと文章を読むのが楽しくなりそうです。

また、三宅さんの文章の書き方も素敵。

読者を引き込む天才的な文章で、自分も三宅さんの立場に立って文章を味わえた気になれます。

ただ解説も視点も超マニアックなので、全部読もうとすると辛いかも知れません。

あまりにもマニアックで面白いので、他の作家さんの文章を解説してもらいたい!!

続編を期待しています。

オススメ度
読みやすさ

 

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