今回ご紹介するのは、『福翁自伝』。
『福翁自伝』は題名の通り福沢諭吉が晩年、自分の人生を口述したのを元に出版された自伝です。
福沢諭吉といえば、平成、令和の初期の1万円札の顔ということは皆さんご存知だと思います。
他にも、「学問のすゝめ」を書いた人でもあり慶應義塾大学を創設した人だというのは有名な話。
でも、福沢諭吉さんって何した人だか知っていますか?
1万円札の顔になるくらいすごい人なんですが、聞かれるとよくわからないという人が多いのではないでしょうか。
この福沢諭吉さんが書いた自伝本「福翁自伝」には福沢諭吉の人生が凝縮されていました。
意外にも子煩悩な父親の顔を持っていたのに驚きでした。
この記事では福沢諭吉さんの子煩悩パパっぷりを少しご紹介したいと思います。
- 福沢諭吉って何をした人か振り返る
- 福沢諭吉流子どものしつけ方
- 福沢諭吉流子どもの教育方針
- 福沢諭吉が子どもたちに残したもの
それでは意外と知られていない福沢諭吉の一面をどうぞ!
もくじ
『福翁自伝』ってどんな本?
福沢諭吉おじいちゃんの一人語り
『福翁自伝』というタイトル通り、福沢諭吉が65歳頃にふと思い立って自分の人生を振り返ってまとめたものです。
福沢諭吉おじいちゃんは1ヶ月に4回、1回4時間のペースで半年間かけて自分の人生を語る会を開いて速記者に記録させていたようです。
喋り倒した合計時間は約100時間!
そして速記の原稿が仕上がると、福沢諭吉おじいちゃんがチェックするというやり方で書き上げられていきました。
福沢諭吉おじいちゃんは、ちょっとした年表を1枚持っていただけ。
まぁよくそれだけで、自分の人生をこれだけ詳細に覚えているなーというくらい内容が濃い!
文庫本1冊には到底収まりきれないくらいのボリュームで、絵巻のように丸めて(6〜7メートルの長さが17本!)時事新報社に保存されているそうです。
私の人生はまだ30年ほどですが、平成の年表を持ちながら経歴を語るのは2時間持つかどうか...
福沢諭吉おじいちゃんの記憶力に脱帽です。
ちなみに目次はこんな感じ。
- 幼少の時
- 長崎遊学
- 大阪修業
- 緒方の塾風
- 大阪を去って江戸に行く
- 初めてアメリカに渡る
- ヨーロッパ各国に行く
- 攘夷論
- 再度米国行
- 王政維新
- 暗殺の心配
- 雑記
- 一身一家経済の由来
- 品行家風
- 老余の半生
何もなければ絶対に手に取らなかった本だと思います。
以前に読んだ藤原正彦さんの「名著講義 」に「福沢諭吉が嫌いだったのが大好きになった!」と書いてあったのです。
「人の価値観を変える本ってどんな本なんだろう」と興味があったので手にとって読んでみました。
福沢諭吉って何した人?
あまりよく知られていない、福沢諭吉さんの業績...
福沢諭吉さんがどんな人生を歩んだのか、『福翁自伝』で個人的に印象的だったエピソードとともに少しご紹介します。
Wikipediaとちょっと違うアプローチで紹介します。どんなことをしたかちゃんと知りたい人はWikipediaで検索してみてください。
幼少期はかなりやんちゃな子どもだったようです。かなり偏屈で変わり者だったのではないかと思わせるエピソードがたくさん!
また緒方洪庵塾にいるときの様子などは、お酒を飲んだり、仲間内で話したり、おバカなことをしたり、今の大学生とさほど変わらない生活を送っていたようです。
その後アメリカに2回、ヨーロッパに1回行って西洋の文化を十分に吸収してきます。
明治初期としてはかなり先進的な考えを持っていたようで、どんなに成功しても妾を取らないをモットーに奥さん一筋だったようです。
ステキな旦那様ですね!
『学問のすゝめ』を書いた福沢諭吉の子育て論
あの『学問のすゝめ』を書いた福沢諭吉さんは、四男五女の9人のお子さんに恵まれました。
子どもたちをどう教育していたのかが語られるシーンが印象的だったので、ご紹介します。
福沢諭吉の子どものしつけ方
『福翁自伝』にはこう書かれています。
またその躾方は温和と活発とを旨として、大抵のところまでは子供の自由に任せる。(中略)また子供の身体の活発を祈れば室内の装飾などはとても手に及ばぬことと覚悟して、障子唐紙を破り諸道具に疵つけてもまず見逃しにして、大抵な乱暴には大きな声をして叱ることはない。
福翁自伝 「品行家風」より
基本的には子どもの自由にさせる。家の中のものが壊されてもしょうがないと諦めて見逃す。
をスタンスにしていたようです。現代のパパさんでも共感できるところがあるのではないでしょうか?優しいパパの顔が見え隠れしていますね。
福沢諭吉の教育方法
さてまた子供の教育法については、私はもっぱら身体の方を大事にして、幼少の時から読書などはさせない。
福翁自伝 「品行家風」より
幼い頃は遊ばせるだけ遊ばせて、5歳くらいまでは文字も見せなかったようです。
小学校に上がった頃の7・8歳くらいからお習字をはじめさせるけど、読書はさせない。
「今は学問をする時だ!」とその当時の人に啓蒙していた人とは思えない教育方針ですよね。
遊ばせるだけ遊ばせて、卑劣なことをしたり汚い言葉を真似たりした時だけ注意する程度。
八、九歳か十歳にもなればソコデ初めて教育の門に入れて、本当に毎日、時を定めて修業させる。なおその時にも身体のことは決して等閑にしない。世間の父母は動もすると勉強々々と言って、子供が静かにして読書すればこれを賞める者が多いが、私方の子供は読書勉強してついぞ賞められたことはないのみか、私は反対にこれを止めている。
福翁自伝 「品行家風」より
読書勉強していたら、褒められるどころか「遊べ!」と言うパパだったようです。
(子どもたちにとっては良いパパなのかも...)
特に読書は学問の基礎となる部分だと考えられています。
しかし福沢諭吉は小さい頃はまず、たくさん遊んで「人」としての精神的・身体的な基礎を築くことを第一としていたのではないでしょうか
そのかいあってか、子供たちは優秀なので...
長男と次男は帝国大学の予備門(今の東京大学教養学部)に入りました。
二人とも修学するとお腹が痛くなる、休んで回復して修学するとお腹が痛くなるを繰り返します。
勉強を始めるとお腹が痛くなるなんて、どこかの小学校にいてもおかしくないですよね。
勉強するとお腹が痛くなるのに、東京大学に入学できるくらい頭が良いなんてさすがです!
結局、福沢諭吉が子どもたちを自分が設立した慶應義塾大学に入学・卒業させています。
福沢諭吉の子どもたちはおそらく、ガチガチの学問よりも自由な学問の方が向いていたのではないでしょうか。
その当時の東京大学は官僚を育成する機関なので(現在でも国家公務員を輩出するための大学ですが)、国を動かすための学問をされていたのではないかと予想できます。
そんなギチギチ、ガチガチの勉強をしていたからお腹が痛くなってしまったのではないでしょうか。
自分の学問の理念で設立した慶應義塾大学を子どもたちが卒業しているということは、ある意味で福沢諭吉の教育が成功したのではと思います。
現在でも、お堅くて優秀な人が東京大学、ちょっとチャらくて遊び心がある優秀な人が慶應義塾大学に行くイメージですよね。
自由で豊かな発想を育むためには、小さい頃から勉強させてはダメだと教えてくれている気がします。
福沢諭吉は育児日記をつけていた!
9人もの子どもがいたのに記録をきちんとつけていたそうです。
2人の子どもを育てて記録をつけるだけでかなり手いっぱいなのに、どうやって9人分つけていたのか少し気になるところ。
日記をつけたきっかけは、福沢諭吉自身がどんな子どもだったかは母に聞いただけで、書いたものが残っていなかったのが残念に思ったから。
子どもたちが成長した後、読み返したら面白いのでは?と思い立って、記録をとっていたみたいです。
今度は私の番になってこの通りに自分の伝を記して子供のためにし、また先年子供の生立のことをも認めておいたからまず遺憾はない積りです。
福翁自伝 「品行家風」より
育児日記をつけているパパさんはいますか?
子どもたちのことを思いながら日記をつけている福沢諭吉さんは、子煩悩な素敵なパパだったのだなと想像できます。
個人的な話ですが、結婚式の時に使う写真を選ぶために実家のアルバムを漁ったことがあります。
その時に写真と共に親のコメントが書いてあるとついつい読んでしまうし、この時こんなこと思っていたんだという発見もあってすごく楽しかったのを思い出しました。
やはり親の言葉、記録は自分がどういう風に育てられてきたかわかる宝物のような価値があります。
現在はスマホなどが普及して、写真やビデオで子どもの成長を記録する人が増えてきていますよね。
写真やビデオだけではなく、福沢諭吉のように言葉も残してあげられると良いなと思いました。
福翁自伝から学ぶ「福沢諭吉の子育て論」〜まとめ〜
今まではお札になるくらい偉い人、慶應義塾大学を創って、「学問のすゝめ」を書いて教育に厳しい人だと思っていました。
今回『福翁自伝』を読んで、様々なオチャメエピソードがあったり、子煩悩なパパだったりいろんな顔を見せてくれます。
また名を成す人は、それだけの能力を持ち合わせているのだと改めて感じた一冊です。
今回ご紹介したエピソードの他にも、アメリカやヨーロッパに勉強に行った時の話や慶應義塾大学を創設する時の話なども載っています。
興味のある人はぜひお手にとってみてください。
- どんなことがあっても子どもを叱らない
(家のものが破壊されても子どもはそんなもんだと思う) - 小さい頃はいっぱい遊ばせる
- 読書は10歳くらいからさせる
- 育児日記をつける
(子どもの成長記録を子どもに見せるためにつける)
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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