お子さん向けの絵本、児童書ってどうやって選んでいますか?
私たち大人は、「これが読みたい」と思ったら自分の責任で買ったり借りたりして読むことができます。
でも、子どもたちはそうは行きませんよね。
大人の絵本の選び方で、子どもたちの将来がガラッと変わるかもしれません。
今回は絵本の選び方を教えてくれた本をご紹介します。
- 子どもにどんな本を読んであげたら良いかわからない人
- 子どもを本好きにしたい人
- 児童書が好きなのに他の人にすすめられない人
もくじ
「教養は児童書で学べ」ってどんな本?
教養は児童書で学べ
出口治明 著 光文社新書 (280ページ)
作者 出口治明さんについて
1948年、三重県に生まれる。日本の実業家。ライフネット生命の創業者。
現在は立命館アジア太平洋大学の学長。
京都大学法学部卒業後、日本生命に入社。
ロンドン現地法人社長、北欧の政府やバルセロナ、コペンハーゲンなどの欧州大都市に融資を行う。
国際業務部長時代は、中国における生命保険事業の認可申請などを手掛ける。
2008年、ライフネット生命を開業。
2017年、代表取締役会長を辞任し、後進の育成などでライフネット生命を支える。
歴史への造詣が深い。『仕事に効く 教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)などの著書がある。
また、自身の読書論を綴った『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ21)はベストセラーとなった。
という輝かしい業績をお持ちの方なのですが、残念ながら私は初めて出口さんの本を読みました。
この本を読んで出口さんの知識の幅広さ、奥深さに圧倒されました。
どんなことが書いてあるの?
出口さんは、
人間が賢くなるために必要なのは、人、本、旅だと思っています。この三つのうちでもっとも効率がいいのは、本です。
「教養は児童書で学べ」出口治明
と主張しています。
けれども、重要なのは子どもたちが”自ら”本を読み始めること。
自分の子が本を読まないからといって心配する必要はないとも言っています。
今回この本で児童書を取り上げる理由としては、
人間は、なんのために生きているかいえば、次の世代を育てるためです。だからこそそのためのツールである児童書は、とても大切なものなのです。
「教養は児童書で学べ」出口治明
とのこと。
この本では10冊の児童書が紹介されていますが、それを厳選するのも大変だったと書いています。
その厳選された10冊がコチラ↓
- 『はらぺこあおむし』には宇宙がぜんぶ詰まっている。
- 『西遊記』はハチャメチャだけど愉快痛快。
- 『アラビアン・ナイト』でわかる、アラブ人ってほんとにすごい。
- どんな人生にも雨の日があるから『アンデルセン童話』を読む。
- 『さかさ町』で頭と心をやわらかくする。
- 『エルマーのぼうけん』には子どもの「大好き!」がテンコ盛り。
- 『せいめいのれきし』で気づく、今を生きることの大切さ。
- 毒があるから心に残る『ギルガメシュ王ものがたり』。
- 「効率ばかり追って幸せですか?」と『モモ』は問いかけてくる。
- 大人も子どもも『ナルニア国物語』を読もう。
読んでいると紹介されている、すべての本を買って読みたくなってしまいます。
紹介されている以外にも参考図書がたくさんあるのですが、そちらも全部読みたくなります。
でもそれは無理なので...
この本に書かれている絵本・児童書を選ぶうえでのポイントを3つに絞ってご紹介します。
【選び方ポイント1】子どもは正直!ロングセラーは名著ばかり
つまらないものはつまらない!子どもは正直
子どもたちは正直です。
面白いものはずーっと食いついて見ていますが一回つまらないと思ったらもうダメ!
すぐに別のものに興味が移ってしまうのです。
私の友人が、
生半可な気持ちでやるとすぐに見透かされて、
そこらへんを歩き回るから、怖いんだよね...
こども相手に演じる時は特に気を遣うんだよー
と言ってました。
だから子どもを向けのテレビ番組や演劇、コンサートなどはよく作り込まれているのです。
もちろん絵本も同様!長年読み継がれている物語はホンモノなのです。
ロングセラーは間違いない
長年読み継がれているものといえば、日本むかし話!
もちろん自分が小さい頃読んだ本も約20年のロングセラーです。
また、この本の出口さんはこんなことも言っています。
世界中でみんなが読んでいる名作は、幼少期に読ませておいたほうが、子どもにとっても幸せだと思います。それがその子の教養の一部になりますから。
(中略)
いいもの、つまり教養になるようなものは、お父さん、お母さんが自信を持って子どもに与えたほうがいいのです。「教養は児童書で学べ」出口治明
特に、『西遊記』『アラビアン・ナイト』『アンデルセン童話』は西洋・東洋を代表する物語で、世界中の人が知っている人類共通のテキスト。
みんなが知っているものを知っていてソンはないのです!
【選び方ポイント2】本歌取りされるのは名作の証
”本歌取り”とは、平安時代のインテリ貴族の間で流行った歌の詠みかたです。
万葉集などの古典の歌を全て覚えていて、それをうまーく取り入れて歌を詠むのです。
「こんなことも知ってるんだぞ」とか「これ知らないとか、おまえ教養ないなー」とか、ちょっとだけイヤミな歌の詠みかたですね。
でも”本歌取り”されるということは、それだけ元の歌が優れているということ。
取り入れたくなる何かがあるから”本歌取り”されるのです。
本歌取りされている作品とは?
例えば、
『アンデルセン童話』の「人魚姫」は悲劇を喜劇に変えてディズニーが映画化しています。
『アラビアン・ナイト』は「アラジンと魔法のランプ」をベースに、「魔法の絨毯」などの要素を入れて、これもディズニーが映画化してます。
『ナルニア国物語』は実写の映画になっていますよね。
他にも、
『不思議の国のアリス』は『鏡の国のアリス』のエピソードを加えてディズニーが映画化していますし、
『ゲド戦記』は「さいはての島へ」を原作として、スタジオジブリが映画化しています。
こう言った児童書とは別の形になっている作品は名作の証なのです。
何が良いか迷ったら、映画や舞台になっているものの原作を検討してみましょう。
映画や舞台などと合わせて、絵本を読んでみるのがオススメです。
【選び方ポイント3】絵本の裏話を仕入れておこう!
もちろん、絵本を読むのは裏話を知らなくてもできます。
【選び方ポイント1】でも紹介した通り、児童書は徹底的に作り込まれているのです。
作者のこだわりや、どうして作られたかを知っていると絵本で新たな発見あって楽しいんですよ。
「はらぺこあおむし」はなんでカラフルなの?
「はらぺこあおむし」の特徴といえば、その独特の色使いではないでしょうか。
このカラフルな元気いっぱいな色使い、作者のエリック・カールはどのようにしてたどり着いたのかご存知ですか?
エリック・カールの両親はドイツ系アメリカ人で、第二次世界大戦の直前に両親と共にドイツに渡ります。
そこで開戦。戦時下のドイツで暮らすことになります。
戦争中の私の幼年時代は灰色でした。ドイツ全土の町や村の建物は、くすんだグリーン、グレーブラウンの色におおわれてかすんでいました。
(中略)
戦後に通った美術学校で、私は初めて色の楽しさを学びました。それ以来、私は幼年時代の灰色の世界と暗い影に反発するがごとく、大胆な色を駆使することに情熱とエネルギーを注いできました。『エリック・カール来日記念講義録 絵本づくりのひみつ』偕成社
だから派手なカラフルな作品が生み出されているのですね。
『はらぺこあおむし』が誕生した裏側には、本人の生い立ちが関係しています。
食べ物は、私にとって、いつも最大の関心ごとでした。私が子どものころはちょうど戦争中にあたり、食べものがとぼしかったので、飢えがいつの間にか、私に、食べものに異常な執着を抱かせるようになりました。とにかく、たらふく、食べたい、その事で頭が一杯でした。
『エリック・カール来日記念講義録 絵本づくりのひみつ』偕成社
幼少期の戦争体験があの『はらぺこあおむし』を生み出したのですね。
わたしはこのことを知ってから、『はらぺこあおむし』の読み方が変わりました。
その少ないページの中に森羅万象があります。
- 最初は1個のたまごからはじまる
→ 世界の始まりは1個の特異点から始まる(ビッグバンの発想) - 最初のページはお月様、次のページは太陽が昇ってくる
→ 昼と夜、1日、1週間といった時間の概念に触れられる - 1日ごとに食べ物の個数が増えていく
→ 数の概念に触れられる - たくさん食べ過ぎてお腹が痛くなる
→ 好きなもだけをたくさん食べるのはダメ(野菜も大事だよ) - あおむしからさなぎを経てちょうちょになる
→ 人は変わる、物事は変化する、動物はメタモルフォーゼ(変態)がある
最初は全て理解できるできませんよね。
でも子どもって、「もう一回、もう一回」と何度でも繰り返し同じものを読みたがります。
面白くて読んでいるうちに、たくさんのことがわかるように作られているのです。
子どもが自分のペースで世界を理解していけるという点で、傑作だ!と出口さんは言っています。
ヴァージニア・リー・バートンのこだわり
『ちいさいおうち』で有名な絵本作家バージニア・リー・バートンの『せいめいのれきし』も、この本で紹介されています。
『せいめいのれきし』は、「地球上にせいめいがうまれたときから いままでのおはなし」をオペラ劇場の舞台仕立てにしています。
この本が出来上がったのは1962年ですが、最新研究でわかったことを盛り込んで岩波書店が2015年に独自の改訂版を出版しました。
(絵はバートンのものです)
『せいめいのれきし』はバートンが8年がかりで作った作品です。
ニューヨーク市にあるアメリカ自然史博物館に毎日通い詰めて、懸命に恐竜の標本をスケッチしていたようです。
バートンが描きためたスケッチはアメリカ自然史博物館のHPから見ることができます。
私が毎朝毎朝正面玄関の階段前に車を止めるのを、博物館で働いている人たちが見飽きたことは確かだ。
『ヴァージニア・リー・バートン「ちいさいおうち」の作者の素顔』より
と言っているくらい、彼女は何を書くにも徹底して調べるそう。
やはり、たかが児童書、されど児童書!本当に丁寧に作られているんですね。
バートンが描きためたスケッチと、絵本の絵を比べて見るのも良いかもしれません。
大人も楽しんで読みましょう!
『ナルニア国物語』の著者であるC.S.ルイスはこう言っています。
児童書と呼ばれるものを大人が楽しんで読むことについて、大人は弁解がましい口調で話します。それは馬鹿げています。五十になっても子どものころと同じく(しばしばそれ以上に)読む価値のあるものでなければ、十歳の時にだて読む価値はないのです。
『別世界にて』C.S.ルイス
ずっと紹介してきた通り、子ども向けのものは本当によく作り込まれています。
子どもだけではなく、大人も楽しめるものが良い児童書ではないかと思います。
恥ずかしがらずに子どもたちと一緒に楽しんで読みましょう!
そうすると、子どもたちが読書の世界に”自ら”入り込み冒険を始めることでしょう。
自然と教養は身につくのではないでしょうか。
私も娘たちと一緒に読書をできる日を楽しみにしています。
- 児童書はよく作り込まれているものが多い
- ロングセラーは間違いない
- 映画化されているものの原作は名作が多い
- 世界観をより深く知るために、著者の本を読むのがオススメ
- 大人も一緒に楽しんで読もう